コラム
2026.05.20
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2026.05.20
「親が亡くなって、自宅と預貯金を相続することになったけど、不動産の値段ってどうやって決めるの?」
「税務署に申告する金額って、買ったときの値段でいいの?それとも今売ったらいくらの金額?」
——相続が現実のものになると、こうした疑問が次々と出てくるものです。
結論からお伝えすると、相続税の計算で使う財産の値段は「相続税評価額」と呼ばれ、市場の売買価格とも固定資産税評価額とも異なる独自のルールで算出されます。
土地は路線価、建物は固定資産税評価額、株式は相続開始日の終値など、財産の種類ごとに評価方法が法令と通達で細かく定められています。
この記事では、相続税評価額の基本、土地・建物・その他財産の具体的な計算方法、評価額が下がるケースと節税の考え方、固定資産税評価額との違い、よくある質問まで、税理士として日々のご相談で多いポイントを整理してお伝えします。
目次
相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算する際の基準となる、相続財産の金額のことを指します。根拠条文は相続税法第22条で、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と定められています。
ここでいう「時価」は、市場で売買される実勢価格そのものではなく、財産評価基本通達という国税庁の通達に基づいて算定される金額です。同じ不動産でも、実勢価格・公示価格・基準価格・路線価・固定資産税評価額の5つの価格があり、相続税の世界では路線価や固定資産税評価額を基礎にした独自の評価ルールが採用されています。
目安としてお伝えすると、土地は公示価格のおおむね80%、建物は実勢価格より大幅に低い水準で評価されるケースが多く、現金や預貯金が額面そのままで評価されるのと比べると、不動産は相対的に税負担が軽くなりやすい構造になっています。
なお、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。法定相続人が3人であれば4,800万円が基礎控除額となり、相続税評価額の合計がこの金額以下であれば、原則として相続税の申告は不要です。
国税庁の統計によれば、2023年中に亡くなった方のうち相続税の課税対象となった割合は約9.9%で、決して特別な税金ではありません。財産の評価を正確に行うことが、納税額に直結します。
土地の相続税評価額は、路線価方式と倍率方式の2つから、その土地の所在地に応じて自動的に決まります。どちらを使うかは、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
基本的な計算ステップは次の通りです。
| 手順 | 内容 |
| ① | 国税庁の路線価図で、その土地が路線価地域か倍率地域かを確認する |
| ② | 路線価方式の場合は路線価×地積、倍率方式の場合は固定資産税評価額×倍率で計算する |
| ③ | 路線価方式の場合、奥行・間口・形状などに応じた補正率を適用する |
| ④ | 貸家建付地・借地権などの権利関係があれば、さらに評価減を行う |
日々のご相談の中で多いのは、「自分で大まかな金額だけ知りたい」というニーズです。
①②の段階までであれば、ご自身でも概算は可能です。ただし③以降の補正は専門知識が必要で、ここを正しく評価できるかどうかで数百万円単位の差が出ることも珍しくありません。
路線価方式は、市街地の宅地で採用される評価方法です。
路線価とは、道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの評価額(千円単位)で、毎年7月に国税庁が公表します。
計算式:路線価 × 各種補正率 × 地積(面積)
たとえば、2025年に相続が発生した東京都内の自宅で、面する道路の路線価が300,000円/㎡、地積が150㎡、補正なしのケースを考えると、評価額は次の通りです。
■300,000円×150㎡=4,500万円
実際には、複数の道路に面している・間口が狭い・奥行が長い・不整形地であるなどの事情があれば、影響加算率や奥行価格補正率、不整形地補正率などを掛けて評価額を調整します。
倍率方式は、路線価が設定されていない地域(郊外や農村部など)で使われる評価方法です。
計算式:固定資産税評価額 × 国税庁が定める倍率
たとえば、固定資産税評価額1,500万円の土地で、その地域の倍率が1.1倍と定められている場合、評価額は次の通りです。
■1,500万円×1.1=1,650万円
倍率は地域・地目(宅地・田・畑・山林など)ごとに細かく設定されており、国税庁の「評価倍率表」で確認できます。倍率方式は計算がシンプルですが、固定資産税評価額そのものが3年に1度しか見直されないため、直近の地価動向と乖離している場合がある点には留意が必要です。
建物の相続税評価額は、その用途によって計算方法が大きく変わります。
これまでのご相談経験から申し上げると、建物の評価で見落とされやすいのは、賃貸に出している場合の評価減です。
自分や家族が住んでいる家屋(自用家屋)は、固定資産税評価額 × 1.0で評価します。
つまり、毎年送られてくる固定資産税の課税明細書に記載されている評価額が、そのまま相続税評価額になります。
たとえば、固定資産税評価額800万円の自宅であれば、相続税評価額も800万円です。なお固定資産税評価額は、新築直後は建築費の50〜60%程度、築年数が経つと経年減価でさらに下がっていくのが一般的です。
第三者に賃貸している家屋(貸家)は、借家人の権利(借家権)が制限的に存在するため、自用家屋よりも低く評価されます。
計算式:固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合は全国一律で30%です。なお、以前は地域差があり、大阪の一部では40%とされていましたが、2006年までに見直され、現在は全国一律となっています。
賃貸割合は、賃貸している床面積の割合を意味します。たとえば固定資産税評価額1,200万円のアパートで、満室稼働中(賃貸割合100%)であれば、評価額は次の通りです。
■1,200万円×(1-0.3×1.0)=840万円
貸家が建っている土地は「貸家建付地」と呼ばれ、土地側の評価も下がります。
計算式:自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借地権割合は地域ごとに30〜90%で設定されており、路線価図に記号(A〜G)で表示されています。借地権割合70%(路線価図でC)の地域で、自用地評価額5,000万円・賃貸割合100%の貸家建付地であれば、評価額は次の通りです。
■5,000万円×(1-0.7×0.3×1.0)=3,950万円
なお、2024年1月から居住用区分マンション(いわゆるタワーマンション等)の評価方法が改正され、市場価格との乖離を一定程度埋める補正が入ることになりました。タワマン節税を検討されている方は、改正後のルールを必ず確認しておく必要があります。
土地・建物以外の財産も、種類ごとに評価方法が決まっています。ご相談を受けていて感じるのは、預貯金や上場株式の計算は比較的シンプルでも、生命保険金や退職手当金の非課税枠の使い方で結果が大きく変わるという点です。
| 財産の種類 | 評価方法の概要 |
| 預貯金・現金 | 相続開始日の残高(普通預金は元本、定期預金は元本+既経過利子) |
| 上場株式 | ①相続開始日の終値、②当月、③前月、④前々月の各月平均終値のうち最も低い金額 |
| 生命保険金 | 受取額から「500万円×法定相続人の数」を控除 |
| 退職手当金 | 死亡退職金から「500万円×法定相続人の数」を控除 |
| 自動車 | 売買実例価額、または同種類の自動車の相続開始時の小売価格から償却費を控除して評価 |
| 貴金属・美術品 | 売買実例価額または専門業者の鑑定価額 |
| ゴルフ会員権 | 取引相場の70%(取引相場のあるものの場合) |
生命保険金と退職手当金の非課税枠は、法定相続人が3人であれば1,500万円までが非課税となります。
受取人を配偶者ではなく子に設定するなど、相続前の設計次第で効果が大きく変わるポイントです。
上場株式の評価で「4つの価額のうち最も低い金額」を採用できるルールは、株価が大きく動いた月の相続では数百万円の差を生むことがあります。
2024年4月10日に被相続人が亡くなった場合、申告期限は2025年2月10日ですが、評価額の選択は4月の終値・4月平均・3月平均・2月平均の中から最も低いものを選ぶことになります。
相続税評価額の算定は、法令と通達のルールに沿って行えば理屈上は誰でも計算できますが、補正率の適用、特例の使い分け、減額要素の漏れの有無といった点で、専門家が関わるかどうかで納税額が大きく変わるのが実情です。
私たち税理士法人EELコンサルティングが相続のご相談で大切にしているのは、「評価額を正しく算定し、使える特例・評価減を漏らさず適用する」という基本姿勢です。
■年間80件以上の相続税申告を継続対応してきた実務経験
■初回相談は無料。相続が発生した後でも、これから対策を始める段階でも対応可能
■土地評価・小規模宅地等の特例・自社株評価まで、評価実務に強い専門家がチームで対応
申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められており、限られた時間の中で財産調査・評価・遺産分割協議・申告書作成を進める必要があります。「まずは話だけでも聞きたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。
土地の相続税評価額は、その土地の使い方や条件によって、原則的な評価額から大きく減額できる場合があります。
率直に申し上げると、ここを正しく拾えるかどうかが、相続税申告の品質を最も大きく左右するポイントです。
前述の通り、貸家を建てて第三者に賃貸している土地は、自用地評価額から借地権割合×借家権割合×賃貸割合に相当する金額が減額されます。借地権割合70%の地域で満室のアパートが建っていれば、土地評価が21%下がる計算です。
第三者に土地を貸して、その上に他人の建物が建っている場合(底地)、土地所有者の評価額は「自用地評価額 ×(1 − 借地権割合)」となります。借地権割合60%の地域であれば、評価額は4割まで圧縮されます。
三大都市圏で500㎡以上、それ以外の地域で1,000㎡以上の宅地は、一定の要件を満たせば「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となり、規模格差補正率を適用して評価額を引き下げることができます。広大な土地は分割しないと売却しにくいという市場実態を反映した規定です。
小規模宅地等の特例は、相続税評価額の減額制度として最もインパクトが大きいものです。
■特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額
■特定事業用宅地等:400㎡まで80%減額
■貸付事業用宅地等:200㎡まで50%減額
たとえば、被相続人と同居していた長男が自宅敷地(評価額5,000万円・面積200㎡)を相続した場合、80%減額により評価額は1,000万円まで圧縮されます。適用には申告書の提出と一定の要件充足が必要で、要件を一つでも欠くと特例が使えなくなる点には注意が必要です。
不整形地、間口が狭い土地、奥行が長すぎる土地、傾斜地、騒音・振動の激しい立地、土壌汚染がある土地など、利用価値が著しく低下している土地は、各種補正率や個別の評価減によって金額を引き下げることが可能です。実務上は現地確認と公図・測量図等の精査が欠かせません。
評価額そのものを引き下げることが、相続税の節税に直結します。
ここでは、生前に行う対策の一例をご紹介します。
最大の効果が見込めるのは、やはり小規模宅地等の特例です。同居や生計同一などの要件を満たすよう、生前から住環境を設計しておくことで、申告時に確実に特例を適用できる状態を作れます。
現金で持つよりも、その現金で賃貸用建物を建てた方が、相続税評価額は大きく下がります。前述の通り、貸家は固定資産税評価額×0.7で評価され、さらにその固定資産税評価額自体が建築費の50〜60%程度に抑えられるためです。
更地のまま持っているよりも、貸家を建てる・借家人と契約するなど、土地の利用形態を変えることで、貸家建付地としての評価減(前述の通り21%程度)を享受できます。
なお、令和8年度の税制改正により、いわゆる「5年ルール」が設けられています。
これは、相続・贈与開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産の相続税・贈与税評価額を、従来の路線価や固定資産税評価に代えて、「取得価額を基に地価変動等を考慮した金額の8割(原則)」で評価する制度で、令和9年(2027年)以降の相続・贈与から適用される予定です。
簡単に言うと、「亡くなる直前に慌てて不動産に組み替えて相続財産を圧縮する」といった対策は効きにくくなるため、早めの対策が重要となります。
「固定資産税の通知書に書かれている評価額と、相続税評価額って同じなの?」というご質問は、ご相談で多いものの一つです。両者は性格が異なるため、混同しないようにしておきましょう。
| 項目 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 |
| 目的 | 相続税・贈与税の課税標準 | 固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税の課税標準 |
| 算定主体 | 国(国税庁) | 市町村(東京23区は都) |
| 評価のルール | 財産評価基本通達 | 固定資産評価基準(総務大臣告示) |
| 評価の見直し | 毎年(路線価は7月公表) | 3年に1度(評価替え) |
| 実勢価格との関係 | 公示価格のおおむね80% | 公示価格のおおむね70% |
土地については相続税評価額(路線価ベース)の方が高く、建物については両者がほぼ一致するというのが、おおまかな関係です。
なお、倍率地域の土地評価では、固定資産税評価額を出発点として相続税評価額を計算するため、両者がリンクして動きます。
家屋(建物)の評価額は、市区町村から毎年4〜6月頃に送られてくる固定資産税の課税明細書で確認できます。
課税明細書が見つからない場合は、市区町村役場(東京23区は都税事務所)の資産税担当窓口で「名寄帳(なよせちょう)」を請求すれば、被相続人名義の不動産がまとめて確認できます。
土地は、家屋と同じく固定資産税の課税明細書または名寄帳を確認したうえで、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で所在地の路線価または倍率を調べ、計算する流れになります。
ご相談でよくお伝えしているのは、土地の正確な評価は補正の適用次第で大きく動くため、概算で十分なのか申告用の確定値なのかで、調べ方の精度を変えるのが現実的という点です。
「3,000万円の不動産」が相続税評価額ベースで3,000万円という前提でお答えします。
法定相続人が1人(配偶者のみ)の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×1人=3,600万円です。
相続財産が不動産3,000万円のみで他に財産がなければ、基礎控除額を下回るため相続税は0円、申告も原則不要です。
一方、法定相続人が同じく1人で、不動産3,000万円のほかに預貯金5,000万円があった場合、課税対象は合計8,000万円−基礎控除3,600万円=4,400万円となります。
配偶者の税額軽減を使えば配偶者には税負担が生じない一方、子が相続するケースでは数百万円単位の納税が必要になります。
このように、不動産単体の評価額だけでは納税額は決まらず、相続人の構成・他の財産・特例の適用可否で結論が変わります。
具体的なシミュレーションは、税理士にご相談いただくのが確実です。
※本記事に記載した税率や制度は、執筆時点の法令に基づくものです。
延滞税・加算税の具体的な税率や、各種特例の要件は変動する可能性があります。
正確な最新情報は国税庁ホームページをご確認いただくか、税理士までご相談ください。